第6章 手に手をとって
「…別にお前を困らせる気で言ったんじゃねぇから勘違いすんなよ?あくまで俺の憶測言ってるだけだから。お前は自分で思ってるよりずっと良いヤツだから。もっと自信持てって言いたかっただけだから」
顔を上げると、黒尾さんは自信に満ちた表情を現している。嘘を言っているんじゃないと瞳が語る。私は、火照った顔を鎮めるようにもう一度視線を逸らしてしまう。
「……ありがとう、ございます…」
「いーえっ。どういたしましてー」
黒尾さんの口調は再度軽快なものへと変わり、両手を軽く掲げ宙でひらひらとさせる。色々な顔を持っていて思わず目まぐるしくなる人だ。
「ん、おっ」
そんな事をぐるぐるしている頭で考えていると、黒尾さんが何かに気付いたように呟く。
黒尾さんを見上げると、斜め後ろを見詰め、ニマニマと愉快そうに笑みを浮かべている。私も釣られてその方向へ目を向けると、目を見開いた。
「お前の王子様第一候補生がお迎えに来たぜ~?」
────そこには、影山さんが、立っていた。