第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
* * *
ピ────────ッ!!
試合開始のホイッスルがけたたましく響いた。孤爪さんは構えていたボールを緩やかにサーブをする。威力は無いが、コーナーギリギリを狙った正確さに長けたサーブだ。東峰先輩はすばやく反応しボールを拾う。
「! スマン!ちょい短い!」
「影山カバー!」
「ハイッ」
力が足りなかったのか、ボールは緩やかに放物線を描く。しかし、すぐに主将が影山さんに指示が飛ばし、影山さんがボールへと動く。そして影山さんと入れ替わるように日向がネット際へと走る。
影山さんの鋭い眼光が日向を捉え、無茶な体勢から上半身を捻り、異様な程正確なトスが放たれた。そして日向は強く地面を蹴って跳躍すると、瞳を強く瞑り、ボールへと右腕を突き出す。
「「!!?」」
─────ドパッッ!!
音駒の皆の瞳が驚愕に開かれると同時に、ボールは物凄い速度を帯びて音駒側のコートへと落下した。文字通り、誰も反応出来ない速さを誇って。
「すげえっ、速えっ!何!?」
「あんなトコから速攻…!?」
犬岡さんと夜久さんも賞賛と驚きの混じった言葉を零す。
そして、「なんだあ、ありゃあ!?」
猫又監督すら。
「おいおい瀬戸ちゃん、すげえじゃねぇかいこりゃあ」
「…凄いのは、あの二人だけじゃ、ないですよ」
「! そりゃあ楽しみだ」
私の言葉に、猫又監督は冷や汗を流しながら笑みを浮かべた。そう、凄いのは日向や影山さんだけじゃない。私は視線を戻し、食い入るように見詰めた。