第1章 天→地
「ご飯?いや、あの、突然の訪問客にご飯を出せるほど余裕はありません」
「何さ!神様だから土下座ダメって言ったんだし、神様にならご飯くらい!」
「…そ、そこに、ある、パン」
フルフルと震える指でさす
「食べていいの?」
頷けば、頭はそのまま机にごっつん
170円の限定品、くそ、食べておけばよかった
「君、名前は?」
「…山田華子」
そうかそうか、そうやって名前を聞いて女の心を!
「騙されるもんですか!」
「…どうしたの?」
「なんでもないです」
ああ、サクランボクリーム
「華ちゃん、こっち向いて」
「なんですっ」
________"華ちゃん、口開けて"
なに…美味しい!
________"華ちゃんが欲しそうな顔してるから"
口の中に広がるサクランボの香り
「ごめんね、僕が食べちゃってて…本当は食べたかったんでしょ」
「なん、で」
「だって、凄く欲しそうな顔してたから」
ああ、なんで白澤さんあなたは、懐かしい記憶を
思い出させるの
鼻の奥がツーンとする
「これ、美味しいよね、ありがと華ちゃん」
「うん…しい……おいしいっ」
「えっ、ちょっ、何で泣く…泣くほど美味しかった?」
「違う!」
違う
違うよ白澤さん
両親を、思い出すたびに胸が張り裂けそうで
悲しい涙が溢れてきたのに
今は何故か暖かい涙が流れるんだ
これは吉兆の印、あなたのおかげなのかな、白澤さん
いや。違う。違うよ
「…やっとッ…受け入れることが出来たんだ」
涙を流す中、優しく背中をさすってくれる所とか
時々声をかけてくれる所とか
「…お母さん…ぷふっ!」
「ちょっと!人の顔見て笑うな!」
「ふふ、あはは!」
「はあー、何が面白いんだか」