• テキストサイズ

【合同企画】舞い散る花びら

第1章 そして…儚さを知る


その場に居るのが居た堪れなくて、
足取り重く俺は病院を後にした。

俺が…俺が………

病院からの帰り道。
何時もの桜並木を通ると、
命の儚さを象徴するように花びらがはらはらと舞い降りてくる。
その光景に胸を締め付けられて思わず叫んでいた。

「散るんじゃねー!!」

「花見に行けたら良いね。」そう言って微笑んだを思い出す。
胸が苦しくなって、熱くなって…
気がつくと俺の目からは涙が溢れていた。
誰にも見られたくなくて。
ゴシゴシと少し乱暴に涙を拭う。
涙を堪えるのに必死だった。
泣いてしまうと、すべてが消えてしまうんじゃねーかって思えて。
足早に寮の部屋へ戻ろうとするけど、進んでも進んでも空回りしている様に
その道程が長く感じる。

寮に着いた頃には既に息はあがっていた。
部屋まで、誰にも会わずに戻る事ができた。
ベッドに腰掛けて制服のポケットから取り出したのは携帯。
メールをタップすると幾つも送られているからのメール。
その一つ一つを読み返す。

何時も同じ位の時間に送られてきていたメール。
それは俺が練習から戻って、メシや風呂を終えた位の時間で
こんなにも俺の事を思っていてくれたんだと思うと、
嬉しくもあり、何も気付いてやれなかった自分が歯痒い。

その夜…
俺はメールを返信した。

『桜じゃなくても何処でも一緒に行ってやる。
だから早く元気になれ。』

/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp