第7章 優しさを君に
が風邪をひいた。
彼女はこの春からバスケットボール部の顧問に就任した。
監督は引き続き白金監督。
ゴホッ…ゴホッ…
苦しそうに咳を繰り返すの頬は熱のせいで紅潮している。
「あ…赤司君? うつっちゃうから、もう帰って。」
「それは無理なお願いだ。恋人を放っておけるはずないだろう?」
そう。一応、彼女は教師でボクは生徒。
一般的には“禁忌”とでも言うのだろうが、ボクには関係ない。
彼女の言葉を受け流して尚もベッドサイドで小説に目を落とした。
ベッドで横になるはボクに帰れと視線を送ってくる。
…が、説得力なんてまるで無い。
そんな潤んだ瞳で見つめられれば、ボクの熱が上がりそうだ。
紅潮した頬に手を添えるとボクはの額に自分の額を重ねた。
ほんのり…と紅く染まっていたのは頬だけだったのに今は顔全体が真っ赤になっている。
「どうした? 熱が上がっているようだが。」
「ゴホッ…もう!早く離れてよ!」
「何故だ? 」
「主将になったばかりなのよ? インターハイの地区予選だって本格化してるのに、
アナタに風邪をうつしてしまう訳にはいかないの!それに………なのに。」
最後の方は声になっていなかった。
まぁ、の考える事など理解出来るが。
「先生と生徒なのに…か。ならば、ボクがどれ程優秀な生徒であるか教えようか?それとも…。」
顔をスッと近付ける。
“先生だと言うならば…もっとイイコトをボクに教えてくれますか?”
息を吹きかける様に囁いて微笑むとは首まで真っ赤にした。
「もう!! 大人をからかうんじゃありません!!」
あまりにも必死なその様子に愛しさが込み上げてくる。
「これじゃ何方がオトナか判らないな。」
の髪を撫ぜるとボクは台所へ足を向けた。
持参していたフルーツを冷蔵庫から取り出して手頃な大きさにカットする。
ミキサーへカットしたフルーツとヨーグルトを入れてスイッチ入れる。
世の中便利なものだ。料理が得意ではないボクでも安易にスムージーなる物は出来るのだから。
ボクがグラスを持って部屋に戻ると彼女は少し目を見開いた。
「機械任せだ。これくらいは出来るさ。」
はクスクスと笑った。
優しい笑顔の彼女に見合う優しさをボクも与えていこう。
だから、早く元気になってくれ。