第7章 優しさを君に
Plus*Shota Higuchi*
「おはよう!今日も1日宜しくね。」
優しく微笑む彼女は何時も練習前に挨拶をして来る。
誰にも見えないように、少しだけ小指を繋ぎ合わせる。
マネージャーであるオレは他の奴らよりも彼女と接する機会が多いはずだ。
それでも、気に入らない…
「チャン!!」
オイ…葉山“先生”って言えよ。
「。」
根武谷…“先生”付けろよ。
「先生。」
実渕…お前は良しとする。
「、メニュー表を。」
赤司…なんで呼び捨てだよ!!
個性が強すぎる洛山バスケ部で、一際目立つこの4人。
練習日誌を書き込みながら、アイツらの声をよく拾うようになってしまったオレの耳。
心の中でツッコミながら、イライラは募っていく。
そんなオレの心の中を見透かすようにこの男が歩み寄ってくる。
「何をイライラしてる?」
深緋色の髪にオッドアイ…赤司。
「そう見えるか?」
「見えるから言ったまでだが。」
「メニュー表はオレが持ってんだから、オレに言えよ。」
オレの言葉にフッ…と口元が緩んだ。
「ああ。そうだな。判っているが…つい構いたくなる。何故だろうね。」
この試すような口調…癪に触る。
「…。」無言を返したオレに赤司はより一層口元を緩めた。
「誰かの恋人だと判っていても、魅力と言うのは実に罪深い。
まぁ、誰かの間に割って入る程、僕は愚かじゃないが…ね。」
「赤司お前…。」
「戯言だ。気にすることはない。」
赤司と入れ違うようにしてがオレの所へ歩み寄ってくる。
「メニュー表をね、赤司君が欲しいんだって。」
「知ってる。」
学校では絶対に崩したことの無かったへの言葉遣いが、
今は学校仕様じゃなかった事には不思議そうな顔をした。
「樋口君?」
「なんですか、先生。」
「ううん。何でもない。」
フニャっと笑ってオレの隣に腰を下ろした。
ベンチの上に無造作に置かれた手に、そっと手を重ねるとが驚いた顔で見つめてきた。
「アイツらと、仲良くし過ぎじゃね?」
「え?」
小さな手を握るとは咄嗟に手を抜こうとした。
「絶対放さない。オレを妬かせるなんて後でお仕置きが必要だな?」
頬を染めた。
とりあえず…その顔が見れただけで今は良しとする。