第6章 ハナミズキ 〜after EP〜
*episode 4 Kotaro Hayama*
ニャァ…
何処からか猫の声が聞こえる。
今日は二人揃って練習は午前中で終わったから、午後から公園でマッタリ。
「小太郎君。猫の声するね。」
「うん。でも何処に居るか分かんねーし。」
「子猫…かな?」
センパイの膝枕で過ごすこの一時が超シアワセ!!
センパイにキスしたくて、瞼を上げて手をのばしかけた時、俺の視界にはセンパイの顔。
その向こうに子猫の姿が映った。
「あ…。発見…。」
センパイは意味がわからずに少し首を傾げた。
そんなセンパイ越しに猫を眺めていると、木の上から降りれなくなったらしい。
俺は上体を起こすと、センパイのほっぺにキスをした。
「こっ…小太郎君!!」
真っ赤になったセンパイ超可愛いの。
「猫チャン発見したから助けて来る。センパイはココで待ってて!」
センパイの頭をぽんぽんと撫でると俺は木の上目掛けて足を掛けた。
新緑の葉っぱが風に揺られてカサカサ音を立てる。
その度に響く心細そうな“ニャァ”が気になって仕方がない。
「小太郎くーん?」
「ん〜…もうチョイで着くからッ。」
センパイの呼び掛けに応えながら、ぐらつきそうな窪みは避けて
足元を確認しながら足をかけて上を目指す。
“ニャァ…”
目の前に姿を現した猫はまだちっこくて黒と白のフワフワが可愛い。
「ほら…おいで。猫チャン…」
そっと手を差し出すと鳴き声が激しくなった。
「え…マジで、食わねぇし。大丈夫だって!」
そっと…そっと…ちっこい身体を手に取るとホッとしたのも束の間。
視界がグラリと揺れた。
「小太郎君!」
ドンっ!と背中に大きな衝撃の後、センパイの泣きそうな顔が飛び込んできた。
「小太郎君、大丈夫?」
「イッテー…大丈夫。」
「ニャァ!」
俺の胸の上で捕まえた猫が鳴いた。
「大丈夫だって。下りれなくなったお前に言われたくねーもん!」
猫を抱きとめている俺の姿を見てセンパイがクスクス笑い出す。
「何?!」
「なんか小太郎君猫みたいだなって思って。」
「ハッ?!チッ…ちげーし!こんなチビ俺の子供じゃないし!俺の子供ならセンパイの子供じゃんかよッ!」
俺の勘違い発言にセンパイは顔を真っ赤にした。
「センパイ大好き。」
ハナミズキの樹の下で猫を抱いたまま俺はキスをした。