第6章 ハナミズキ 〜after EP〜
*episode3 Reo Mibuchi*
最近のアタシは情緒不安定。
理由なんて分かっている…が他の男と話すたびにイライラするのよ。
アタシってこんなに独占欲強かったかしら…欲張りではあるけれど、
恋人に対しては寛容なつもりだったのよ。
「!」
アタシは堪らず、席を立ったの手を掴んだ。
「玲央?」
「アタシから離れるの?」
「同じ教室の中に居るじゃない。」
少し困ったように微笑んだを安心させようと、アタシはパッと手を放した。
「やぁね。冗談よ。なんて表情してんの。」
アタシの言葉に安心したのか小さく笑うと呼ばれた場所へと歩いていった。
(冗談…でもないんだけど。)
誰にも分からないようにそっと溜め息を吐く。
こんなアタシを見せてしまうと愛想を尽かされてしまうんじゃないかと不安になる。
付き合いが長くなれば長くなる程に大きくなる不安と思い。
正直、こんなに誰かを好きになった事がないアタシは思いを持て余している。
が誰かに笑顔を見せる度にアタシは目を伏せる。
だけど、ガマンが出来なくなったのはアタシ以外の男がの髪の毛に触れた瞬間だった。
「うわぁッ!」の驚きの声も無視してアタシはを腕の中に閉じ込めた。
そのまま、の身体を抱きかかえると教室を後にする。
辿り着いた先は屋上。
「ちょっと、玲央どうしたの?」
の問いかけにやっと冷静さを取り戻した。
「貴女に触れていいのはアタシだけ。だから、ガマン出来なかったのよ。」
らしくもなく口調を強めてしまった。
それでもは気に留める様子もなく優しく微笑んで、
アタシの首に腕を回してしがみ付く様に抱きついてきた。
「嬉しい…。」
のくぐもった声が聞こえる。
「何よ。」
「玲央がヤキモチなんて嬉しいんだもん。」
「ちょっと、やぁね。なんでそんなに余裕があるのよ。」
「余裕なんてない。私は玲央の何倍も嫉妬するの。だから、玲央も同じなんだってすごく嬉しい。」
黒い思いを吐露してしまえばなんて事はない結末。
「玲央。私の全部は玲央のだから。」
からの柔らかい口吻。
“アタシもよ”
に届くのはいつになるかしら。
繰り返されるキスは二人の秘密。