第6章 ハナミズキ 〜after EP〜
*episode5 Seijuro Akashi*
『どの子がタイプ?』
から送られてきたのは3通のメール。
もちろん添付画像はなのだが…
『つまりはどの眼鏡が良いか?と言う事か?』
「中身がお前ならどれでも構わない」と返信しそうになったが、
そんな事を返信すればたちまち機嫌は急降下するだろう。
『その答えは明日にする。』
僕から直ぐにでも返事が欲しかったは今頃ガッカリしているだろう。
それも僕の計算の内だけどね。
だがココで一つ疑問が湧く。の視力は眼鏡をかける必要はなかったはずだが、
そのが何故眼鏡を手にしたかは疑問だ。
勉強の手を止め、机の上に置いてあった携帯電話を手に取ってみる。
の番号を呼び出し通話をタップしようと…指先が止まった。
声を聞いてしまえば、明日が待ちきれなくなりそうだ。
明日は久しぶりに二人で過ごす事になっている。
急ぐ必要など何も無い。
まるで自分に言い聞かせるように言葉を紡いで、僕は勉強の続きに手をつける事にした。
翌日、見渡す限り空は青く日中の気温は汗ばむ程の陽気になりそうだ。
少し早めに待ち合わせ場所に着くと、も程なくして姿を現した。
「やあ。こうやって二人で出かけるのは久しぶりだ。」
「そうだね。インターハイの地区予選で忙しいんでしょ?」
「日程が立て込んでいるだけだ。」
手を差し出すと、が頬を染めて嬉しそうに微笑んでそっと手のひらを置く。
「手を繋ぐだけでそんな表情をされると…その先を望んでしまいそうだ。」
すると今度は首まで真っ赤にして俯いてしまった。
「君は本当に愛らしいな。この先もずっと目が離せそうにない。」
「征十郎こそ…目が離せないよ。」
「それは本望だ。僕は君を離すつもりはないからね。」
繋いだ手をそのまま引き寄せると鼻先まで迫ったお互いの視線。
視線を逸らすことなくを真っ直ぐに見つめれば、
彼女は遠慮がちに上目遣いで僕を見つける。
「、僕は君自身が愛しい。何かで飾られる事なく、
ありのままの君を愛している。これが、昨日の答えだ。」
の目が驚きで見開かれたかと思えば、
次の瞬間に僕の唇は柔らかな感触に包まれた。
彼女から与えられる甘い痺れに僕は溺れていくだろう。