第5章 何度でも
月日はあっという間に流れていった。
ボクの誕生日にはカップケーキにロウソクを立てて
『ハッピーバースデー』を歌ってくれた。
家に帰れば…
欲しくもないプレゼントの山とお祝い電報。
ボクの誕生日なんか忘れたみたいに働く父。
そんな父からは「おめでとう。」も無ければ『プレゼント』だって無い。
少し豪華な花はせめてものシルシなのかもしれないけど、
ソレだってどうせ執事がした事。
母が生きていた頃は祝ってくれたのに…
外を見ると雪が積もっている。
部屋にあるインターフォンで執事を呼びつけるとボクは身支度をした。
「征十郎様。どうされました?」
「センセイのところへいく。くるまをまわせ。」
「今からですか?」
「そうだ。」
「外は雪が積もっています。明日、幼稚園でお会い出来るかと思いますが。」
「いまあいたい。」
「しかし…。」
執事が何を言いたいのかは分かっていた。
父が不在の日に次期後継者である一人息子を出掛けさせたとなっては、
不祥事とも言える問題になる。
「きょうはボクのたんじょうびだ。いわってくれるものなどだれもいない。
だから、あいにいく。」
頑として引かないボクの態度に渋々車を回す旨の連絡を執事がとっている。