第5章 何度でも
おやつは先生の手作りお菓子。
先生の笑顔みたいに優しい味。
そしてほんのり甘いホットミルクには蜂蜜が入っている。
決して広くはない空間に二人きり。
先生を独り占めしている事実が嬉しくて仕方がなかった。
「征十郎くん。みんなと一緒じゃなくて寂しくない?」
心配そうにボクの顔を覗き込む先生。
「さびしくない。」
「征十郎くんのお友達は寂しいかもしれないよ?」
『お友達』と言う言葉にボクはズキンとなった。
ボクは未だ5歳だと言うのに既に『赤司征十郎』と言う名前だけで評価されている。
日本有数の名家…赤司グループの次期後継者。
『赤司』と言うブランドに寄ってくるだけの社交辞令に、
ボクはウンザリしていた。
「ボクは…ともだちがいないん…だ。」
ボクの言葉に先生は少し悲しそうな顔をした。
「センセイとふたりのじかんがボクはスゴくダイスキ。」
「先生も征十郎くん大好きよ。だけど、お友達欲しいと思わない?」
先生の言葉に目を伏せてボクは首を振った。
すると先生はお昼寝の前みたいにボクの頭を撫でた。
「明日は何のお菓子にしよっか?」
それ以上先生は何も言うことなく話題を変えた。
「センセイのマドレーヌがスキ。」
「フフッ。じゃあ、明日はマドレーヌにしようね。」
先生が嬉しそうに笑うと心の中が温かくなる。