第1章 そして…儚さを知る
必死に勉強した甲斐もあっても見事合格。
二人してわざわざ京都の高校へ進学することになった。
黒のジャケットに白のシャツ。
男子は黒のネクタイだが女子は黒のリボン。
シンプル過ぎる制服。
それでも自身は気に入っているようだ。
「つかさ、オマエの親もよく許可したよな。寮生活だぞ。」
「え? うん。別に何も言われなかったよ。」
がヘラっと笑う。
「締りのない顔。」
「可愛いの間違いでしょ?」
「はいはい。」
軽くあしらったのは、照れ隠し。
本人目の前にして肯定するには恥ずかし過ぎる。
女子寮と男子寮。
建物は別々だが敷地は同じ。
入り口で待ち合わせしてから一緒に入学式へ向かう。
「ねぇ…桜、未だかな?」
頭上に伸びる桜の枝で大きく膨らんだ蕾を眺めながらが呟く。
寮から校門への道程の途中にある桜並木。
満開になればそれは綺麗な景色が広がるだろう。
「もう少しだろ。」
「だねっ!」
ピョンっと跳ねるようにして俺の隣に並んだは俺の手を握ってきた。
振りほどくのも不自然過ぎて、俺は繋がれた手をそのままにした。