第5章 何度でも
それからボクはお昼寝を途中で抜け出して先生とお花見をする様になった。
1日…1日…と日を重ねる度に舞い降りてくる花びらの数が多くなっていった。
その度に先生は少し悲しそうな顔をした。
そんなある日…朝から続く雨にボクが先生を独占出来る時間は無くなってしまった。
先生が「おやすみ。」と頭を撫でてくれる。
「おやすみなさい。」と返すと先生は優しく笑った。
きょうはあめだから…センセイはずっとココにいる…
そう思うと急に瞼が重くなってボクは夢の中に引き込まれた。
…
夢の中のボクが先生を呼ぶ声。
征十郎…
夢の中で先生がボクを呼ぶ声。
夢の中ボクは凄く大きくて、
何でか胸が苦しくて…
涙が今にも溢れてきそうで。
だけど、目の前の先生は今と変わらず優しく笑うんだ。
「、何も心配する事はない。」
「征十郎…後悔…してない?」
「ああ。お前が居ない人生など考えられない。」
「アナタは何でも手に入れてしまうほどの人なのに…」
優しく微笑んでいた先生の瞳に涙が浮かんでいて。
目尻からスゥ…っと涙が溢れると、
その後を追うように桜の花びらが舞い降りた。