第4章 ヤキモチ
「誰も居ないし、中へどうぞ。」
靴を脱いで中へ入ると出会った頃と同じように緑とピンクの綺麗な
風景が広がっていた。
「ねぇ、サン。あの人誰?」
「あの人?」
だって気になるじゃん。
お互いが名前呼びなんて…フツーの関係じゃないだろ。
「ヒカルの事?」
「そー。」
「ヒカルは幼馴染みなの。幼稚園からずっと一緒なの。」
「ふーん…。」
俺の言葉を気にするでもなく弓を引く体制に入るサン。
ダンッ…
的を射った音が一つ大きく響いて俺は声を掛けた。
「ねぇ。俺もしてみたい。」
「じゃあ、ここに立ってみて。」
サンに手招きされて、俺はサンから言われた場所へと立ってみた。
サンは俺の手に弓と矢を渡すと、俺の後ろにピッタリと引っ付いた。
「もっと…胸を張る様に、背筋を立てて。」
「こう?」
「そう。」
背中から伝わる体温。
囁くような声。
「的から視線を外さないで…真っ直ぐ弓を引いて。」
手を添えられて密着する身体に俺の心音ハンパない。
サンの言う通りにギュっと弓を引いて手を離すと
放った矢はヒュッと音を立てて28m先の的へ中てた。
ダンッ…と音を立てた瞬間、桜の花びらが舞い落ちる。