第4章 ヤキモチ
ホワイトデーはバスケ部の練習もちょうど休みで、
俺は弓道場の入り口でサンの練習が終わるのを待っていた。
3月と言えど桜が咲くには未だ早くて、
吹き抜ける風が身体の体温を奪っていく。
(さっみぃ…。)
弓道場からは他の部員が次々出てくるのに、
サンの姿は未だ現れない。
痛いくらいに刺さる視線に堪えながら、
サンを待つ。
空の色がオレンジから紫へ変わろうとしている頃。
「葉山君?」
「アッ!! サン!」
「どうしたのこんな所で。」
「あっ…え…っと…待ってた。」
サンは不思議そうな顔をした。
「サンを待ってたんだ。」
「私を?」
「うん。」
「入ってきてくれれば良かったのに。」
そう言って、サンは俺の手をとった。
「こんなに冷たくなってる。」
「ダイジョーブだって!!」
俺はいつも通りニカっと笑って見せる。
手から伝わるサンの体温が心地よくて、
だけど手を握られていると言う事実が恥ずかしくて。
俯いてしまう。
その時、俺は自分の手からぶら下がっている紙袋の存在を思い出した。