第4章 ヤキモチ
「葉山君、中に入ってみる?」
「えっ?! いいの?」
「靴は脱いでね。」
「あ…もっ…もちろん!!」
中に上がった俺は邪魔にならない様に隅っこに座った。
サンは深呼吸をするとまた弓を構えた。
ピンと伸びる背筋。
まるでこの道場には時間が無いのかと思える程の静粛に俺は思わず息を飲む。
その音さえ響きそうな静粛に緊張する。
ビュンッ…
サンが放った矢はダンって音を立てて的のほぼ真ん中を射た。
流れるような所作にいつしか見惚れていた俺。
いつしか闇が包んでいて、そんな事も気付かずにずっと眺めていると
彼女が振り返った。
「時間大丈夫?」
「えっ?! あっ…ん。ダイジョーブ。俺、寮だし。」
「寮…って事は…。」
「うん。バスケの特待生。」
「へぇ。凄いね。」
「へへっ…そーかな。」
「そろそろ、練習切り上げて片付けるから。」
「俺、送ってこうか?」
「ありがとう。でも、私も直ぐ近所なんだ。」
「そっか…。」
もう少し一緒に居たくて…俺のテンションは一気に沈んだ。
「今度、バスケ部の練習見に行っても良い?」
その一言で俺のテンション再浮上。
「もちろん!!」
俺は名残惜しいキモチを隠して、笑顔で弓道場を後にした。