第4章 ヤキモチ
居残り練習で帰りが遅くなった時。
空がオレンジ色から紫色に変わりつつある…そんな時間。
『離れ』を通りかかると弓道場からは灯が漏れていた。
その灯に吸い寄せられるように俺は弓道場に向かった。
少しだけ開いた入り口の扉から中を覗けば残っている部員は少ないらしい。
どうしても中を覗きたかった俺はコッソリ入り口を開けて弓道場に入った。
ダンッ…
髪の長い女子が放つ矢は真っ直ぐに的を射る。
だけど、俺がビックリしたのはその景色。
目にも鮮やかな若竹色の竹林の中に一本。
桜の樹が立っている。
はらはらと舞い落ちる桜の花びらがキレイで思わず声を上げた。
「スゲー!!!」
しまった!と思った時は既に遅かった。
突如として響いた声に、矢を射る手が止まりその女子が振り返った。
「あ…ゴメン…。邪魔するつもりじゃなくて…。」
怒られると思った俺はしどろもどろになる。
「1年生?」
「え…あ…うん。」
思いがけず、優しい声色に俺はマヌケな返事をした。
「部活生?」
「うん。バスケ部なんだ。」
「ウチのバスケ部、大変でしょう?」
「そうかな? 俺はボール触ってんの楽しいし。…って俺、葉山小太郎!」
「私は。」
こう言う人を才色兼備ってんだろーなとか思った。