第3章 桜雨
“その後ろ姿に一目惚れしたのよ。”
なんて言える訳もない。
「ねぇ? 別れた理由…聞いても良いかしら?」
「髪の毛が長い子が好きだって言うから、私も長くしたの。やっぱり好きな人の好みの女の子になりたいじゃない?
だけどね。突然、髪が長いのはイヤだって言い出したの。そうやって、好みの女の子を演じる私が重いんだって言われて。
重いって言われた事はショックだったけどもっとショックだったのは、
私と別れて直ぐに付き合いだした子は私よりも髪の長い子だったコト…かな。」
理由を聞いときながら、アタシは後悔していた。
が余りにも切なそうな顔をするから。
イヤなコトを思い出させてしまったコトの罪悪感ったら、ないわね。
「ごめんなさい。イヤなコトを思い出させちゃったわね。」
「ううん。大丈夫だよ。いまは玲央に大切にして貰ってるから。」
のその言葉はアタシの心を温かくしてくれる。
「ホントに。貴女は可愛いらしい人。もう手放せそうにないわね。」
唇をなぞるように指でそっと触れると顔を紅くする。
そしてアタシはを愛しむかのようにその綺麗な髪の毛に口付けをした。