第3章 桜雨
「ところで、連絡事項って言うのは?」
「ああ。何時も通りだ。」
「え?」
連絡事項が“何時も通り”と言うのはどう言う事なのか?
思わず聞き返したアタシに征ちゃんは穏やかな様子で微笑んだ。
「想いを寄せ合う恋人の時間を邪魔するほど不粋な人間じゃないさ。」
“連絡事項”なんてものは存在しない。
恐らくは、偶然通りかかってアタシと彼が揉めている雰囲気に気が付いた…
ってトコなのだろうと思うと、やっぱり征ちゃんには敵わない。
颯爽と去っていく征ちゃんの後ろ姿を見ているとの謝る声が聞こえた。
「ごめんね。」
ほんの僅かな時間だったのに、は少し疲れているように見える。
「やあね。どうして謝るの?」
「だって…イヤな事ばかり言われたから。」
「気にしてないわ。アタシは自分の事恥ずかしいと思った事はないし。
こんなんだけど、舐めてもらっちゃ困るわね。アタシ意外と強いのよ?」
アタシの言葉が可笑しかったのか、がクスクス笑い出した。
「前ね…あの人と付き合ってたの。でも、フられちゃった。丁度…一年前くらいかなぁ。
せっかくの桜が雨でたくさん散って。それがまた切なくって。」
は苦笑いを浮かべた。