第3章 桜雨
「運動部のヤツだったらもっと他にも居るだろ?」
小馬鹿にした様な台詞。
言いたい事は何と無く察しがつくけど。
「あら? アナタより美的センスが秀でてるだけなんだけど。
何がお気に召さないのかしらね。」
「運動部のクセに女みたいな立ち振る舞いに決まってんだろーよ。」
「あらあら…人より少しばかり勉強が出来るからってお高くとまってる
人間としてはサイッテーな男よりはマシのはずだけど。」
「運動しか能の無いヤツの遠吠えにしか聞こえねぇーな?」
がアタシのジャケットをギュっと掴む。
の不安を拭う様に、アタシはそっと頬を撫でる。
「大丈夫よ。何も心配いらないわ。」
「玲央。」
そこに響いたのは彼の声。
「人の恋路をとやかく言うような不粋なマネは感心しないが。」
全能の神…成らぬ、帝王のご登場。
「征ちゃん!!」
「玲央、すまないな。練習の事で取り急ぎ連絡事項があってね。
せっかくの時間を邪魔したくはなかったんだが。」
征ちゃんの登場に男の顔色が変わった。
その男の隣を通り過ぎながら征ちゃんはわざと“邪魔”と言う言葉を強調した。
「他に何か要件でもあるのか?」
征ちゃんの有無を言わせない雰囲気に男が息を飲んだ。
男が踵を返したのを確認して征ちゃんは“やれやれ”と言った表情を浮かべた。