第3章 桜雨
ハァ…。
何度目か判らない今日の溜め息。
どこでどうバレたのか?
昨日、征ちゃんの部屋から出るとき…
「今度は桜のクッキーが食べてみたい。」
なんて…誰の差し金よ!
アタシの溜め息に前の席のさんが振り返った。
「どうしたの?」
「もう…さんからのクッキーの話を征ちゃんに知られちゃって。
独り占め出来そうも無いのよ。せっかく楽しみにしてるのに。」
「独り占め?」
「そうよ〜…せっかくさんがくれたのよ?
他の男になんて渡したくないじゃない。
こう見えてアタシ独占欲強いのよ。」
無意識に出た本音。
まぁ、彼女の反応を見るにはいいかもしれないわ。
目の前のさんは頬を染めて恥ずかしそうにした。
「ねぇ…さん。アタシとお付き合いして貰えない?」
「え…あ…はい…。」
消え入りそうな程にか細い声で「はい。」と返事をしてくれたさんの
恥ずかしそうな姿が可愛らしくて、私の口元は緩めずにいられなかった。
こうしてさんと恋人同士になって、
さんは短くした髪をアタシの為に伸ばし始めた。