第3章 桜雨
「実渕君、甘いモノ平気だったよね?」
「ええ。」
「桜の香りがするクッキーを作ってみたの。嫌いじゃ無ければ…
食べてみてくれるかな?」
包み紙を開けるとふわっと広がったのは桜の香り…
そして、少しだけ甘さをプラスするバニラ。
「美味しそうね。」
「お菓子作りが得意な実渕君には負けちゃうけど、
良かったら感想教えてくれる?」
「ええ、頂くわ。ありがとう。」
「よかった。」
さんはホッとしたような表情を浮かべて、
友達の所へかけて行った。
アタシはもう一度その香りを確認して鞄へ大切に仕舞い込む。
「なんかレオ姉だけずりーよな…。」
コタの不貞腐れたような口調に思わず笑みが零れる。
「なぁに? アンタにこんな乙女チックな趣味あったかしら?」
「そーじゃなくてさ…。」
まぁ、言いたい事はなんとく想像出来るけど。
お気に入りのコを他の男にワザワザ近付ける様な事するわけないじゃない。
「女心を勉強するのね。」
コタはプゥっと頬を膨らませた。
その様子をからいながらも、アタシはさんへのお返しの事を考えていた。