第3章 桜雨
そして数日後…
彼女は長かった髪をバッサリ切ってしまった。
アタシの前の席に座る彼女のうなじが嫌でも視界に入って、
あの雨の日を思い出してしまう。
彼女の細っそりとした首。
思わず触れてみたくなる衝動にかられてしまうけれど。
見て見ぬフリをする。
(早く授業が終わってくれれば…)
そんな風に願ってしまうアタシはかなり重傷なのかもしれない。
授業終了のチャイムが響くと現れる二人組。
「レオ姉〜!!」
ニカっと愛嬌たっぷりに手を振りながら近づいてくるニャンコ小僧1人。
「ガァ〜…。」
頭の中もマッスル間違いない筋肉バカ1人。
「もう。アンタ、食べる前からゲップってどう言う事なのよ!
少しは場をわきまえなさいよ。」
呆れたような私の口調にクスクスと控えめに笑う可愛らしい声。
「実渕君達はいつも楽しそうね。」
さんが笑顔で話しかけてきた。
「そうかしら? …ったく品がなさすぎるのよ。」
「フフ…。実渕君程女子力の高い男の子が居るなら、
是非見てみたいけど。」
少しだけ小首を傾げるような仕草をしたさんに、
コタは頬を染めて見惚れている。
「あら…嬉しい褒め言葉ね。」
アタシの言葉にニッコリ笑った彼女は何かを思い出したように、
鞄の中から包み紙を取り出してアタシの前に差し出した。