第2章 オレの日常
キュッ…
バッシュのスキール音にドリブル音。
隣のコートへ目をやればそこにはの姿がある。
女子バスケ部のマネージャーをしているはストップウォッチ片手に
何かを書き込んでいる。
「…さん? 黛さん??」
「あ?」
「ちょっとヤダ。そんなに彼女に見惚れないで下さいよ。」
「は?」
“見てたでしょ? ちゃん。”
実渕が耳元で囁くと妖しげに笑った。
「気のせーだろ。」
見惚れてたって程じゃない。
なんとなく視界に捉えただけ。
ソレを実渕に見られた気恥ずかしさはあるものの動揺を悟られまいと、
オレは感情も何ものせずにただ端的に言葉を紡いだ。
「赤司ー。永チャン、担任に呼び出しくらってて遅れるってさ。」
「そうか。」
入口の方からは葉山と赤司の会話が聞こえてくる。
「ほら。帝王のお出ましだろ。行ってこいよ副主将。」
オレの言葉に反応するように実渕は赤司の姿を捉えるとそちらへ駆けていく。
入部して間もないと言うのに《キセキの世代》の元主将はウチの主将になった。
オッドアイが印象的な深緋の髪。
とりわけ…あの琥珀色の瞳は全てを見透かしている様な印象さえ与える。