第2章 オレの日常
「桜ねぇ…。」
に視線を移すことなく、まるで相槌でも打つかのようにオレは呟いた。
「千尋にとっては高校最後でしょ?」
「…。」
「いつも、バスケで忙しいから。たまには千尋と…二人で居たい…デス。」
だんだんと声が小さくなっていく。
それが可笑しくて思わず吹き出した。
「プハっ!! 何、弱気になってんの。」
「だっ…だって千尋の反応ないし。」
「桜はイイケド…この時期はドコもダダ混み。ココが何処か忘れたのかよ?」
そう…ココは京都。
年間を通して観光客で賑わうこの街。
桜の咲くこの季節と紅葉の秋。
特にピークを迎える。
「別に名所と呼ばれる所に行きたいわけじゃないし。」
「ふ〜ん…。」
「ねぇ…千尋。ダメ?」
無自覚なのがムカつく。
オレはの「ダメ?」に弱い。
「ハァ…わーったよ。今度の日曜な。」
「やった!」
花が咲いたような笑顔を見せる。
この笑顔がオレにとっては花のようなモンだから。
オレには花見なんて必要ないんだけどな。
そう思いつつも嬉しそうなを見れば、
思わず口元が緩みそうになるわけで。
だからオレはソレを隠すために活字を目で追う。