第11章 悪寒
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「そこ迄だ。
健三さん。」
「あぁ、影虎さん。
良い加減娘を返してくれませんかね。
こんな姑息な真似して。」
「無理だな。
俺は由妃に頼まれてる。
はお前には絶対渡さない。」
由妃…?
「話が通じない人だなぁ。
仕方ない。
今日のところは出直しだ。
また来るよ。
ーーー。」
バタンと大きな音がしてクルマのドアが閉まる。
耳障りなエンジン音が聞こえて遠ざかる。
少し生暖かい風が頬を掠めた。
「。一先ず、家に帰るぞ。
みんなに集まってもらってる。」
「…」
私は半ば放心状態でクルマに乗り込んだ。
誰も何も話さなくて、
クルマに流れるラジオの曲がやけにうるさく感じた。