第1章 マンホールに落ちて
「そっそんなこと、理解しているに決まっているでしょう!」
「はっ、どうだか」
バカにするかのように、エルスは鼻で笑う。
「ふ、ふんっ!」
腕を組み、アリスをそっぽを向く。
「本っ当に、嫌味な人ね!エルス!あなたはいつも難しい言葉ばかり並べて…私みたいに、色んなことを体験したこともないくせに!」
そこまで言い切ると、アリスは急に口を閉ざした。
おかしいわ……
アリスは、少し心配になってきた。
いつもなら
「アリス、お前はいっつもそればかりだ。少しは成長したらどうだ?」
と、エルスが悪態づいてくるはずなのに。
アリスは、どうしても気になって仕方がなくなってきた。
チラリ、と横目でエルスが居るはずの方を見る。
しかし
「……エルス?」
そこに、エルスの姿はなかった。
あるのは、場に不釣り合いな、黒光りしたマンホールだけだった。
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