第1章 マンホールに落ちて
「……エルス?ねぇ、エルスってば!!」
「………えっ?」
「もう、やっと気付いたのね。立ったままお昼寝でもしていたの?」
アリスが、ぷくーっと頰を膨らませる。
小さい頃から変わらないな、コイツは……
少々呆れながらも、エルスは軽くあしらう。
「あぁ、ごめん。ちょっと、ぼぅっとしてた」
「へぇ、エルスが、ぼぅっと?」
アリスは、わざとらしく驚いた表情をする。
口元は、にんまりと口角が上がっている。
「珍しいこともあるものねぇ?いっつも、僕は完璧だ〜とか言ってるのに。明日は、大雨かしら。それか、槍でも降ってくるのかしら。ねぇ?エルス」
「うるさいな」
思わず、怒気を含んだ声になった。
「完璧な奴だって、ぼぅっとすることくらいある。お前は完璧ってのを、ちゃあんと理解できてるのか?アリス」
意地悪そうにアリスに詰め寄るエルス。
アリスはタジタジになりながらも、胸を張って答えた。