第22章 ✝バイト戦記✝Ⅲ
栞鳳の鏡に
映し出されたその顔は、
まるで本物の鬼のように
血相を変えた自分だった。
実「嘘…え?」
実咲は、
まだ状況が掴めない。
栞鳳はそんな彼女に
追い打ちをかけるように言った。
栞「いっやぁ~。
本当にいるんだね。
こんな簡単すぎる罠に引っかかる奴って。
僕失敗するかなぁ~って
思ってたんだけど…。
もしかして実咲さんって…
口先だけのチョロイ人?」
可愛らしい笑顔が
実咲の瞳を突き刺してくる。
先程とはまるで態度が
違う栞鳳に、実咲は驚いていた。
栞鳳はコテっと
首を傾げると、
テーブルに置いておいた
水を持ち抱える。
その時、翠も水をもち抱えた。
栞「さっきまでの話…。」
翠「ぜーんぶ…。」
「「お 前 の こ と だ よ !」」
そう叫んだ瞬間、
ふたりは水を実咲に
ぶっかけた。
冷たい水の感触に
実咲は呆然と立ちすくむ。
そんな彼女の視界にヌッと
出てくる怪しい笑顔。
栞「残念な女の子だねぇ??
そんな人をいじめる前にさぁ…
自分のブッサイクな頭を
どうにかしたほうがいいよ♪」
嘲笑った栞鳳は
実咲を置いて店を出ようとする。
栞「おいで、吹雪姫。」
翠「あ、待って!」
栞鳳に呼ばれた翠は
実咲の前に立ちはだかった。
軽く軽蔑した眼差しを向けて。
翠「人をいじめて何を得るの?
他人の気持ち、考えたことある?
どんなに辛いか、苦しいか。
貴女がやっていることは
彼女を深い谷底にまで突き落としてる。
″ 犯罪 ″ なんだからね。
アタシは貴女を許さない。」
翠が目の前を
立ち去ったとき、
実咲は声をあげることもできず、
只、立っていることしかできなかった。