第21章 ✝バイト戦記✝Ⅱ
しばらくは
嗚咽を押し殺して立っているだけだった。
涙を出したいけれど、
涙ではない他のものが溢れ出てくる。
悔しみだ。
まさか、
私はこんな簡単だった罠に
引っかかるなんて。
自分が自分を馬鹿らしく
嘲笑いたいと思ってしまった。
沙「…っ」
憎しみがこもった
瞳は、自然に実咲を見つめる。
実咲は、
【いい気味】と口を動かしていた。
私はこんなとこで負けてられないよ。
涙は絶対に流すもんか。
強くなって 強くなって・・・
刈真君に強い姿を見せなきゃ。
そうしなきゃ。
刈真君は
私を心配して困ってしまう。
そんなこと・・・させたくないから。
私は、グッと拳を握り締めた。