第21章 ✝バイト戦記✝Ⅱ
翠「!っ」
もうだめだと
目を瞑った瞬間、
聴き慣れた彼のだらしない声が響いた。
恐る恐る瞼を開く。
すると、目の前には
大きな黒い背中が。
優「怪我してねぇか…?」
翠「嘘っ優一!?大丈夫!!?」
翠は、
優一があの本に
どこかをぶつけたのかを思うと、
心配になり 叫んだ。
優一は、
本棚を背に振り返る。
その頬には、
小さくかすり傷が出来ていた。
翠「ああ…優一っごめんね…?」
優「別に…。」
ぶっきらぼうに答える優一は、
下へ視線を下ろす。
そして、一息してから
しゃがみこんだ。
翠「優一?」
翠の呼びかけに
優一は顔を上げる。
優「…本。」
翠は、
自分も下に目線を落とす。
すると、落ちてきた本達が
バラバラと地面に散らばっていた。
この本達から
優一は自分を守ってくれたのだ…
翠は、ふと
あたたかい気持ちに包まれると、
自身もしゃがみこみ、
本をとると同時に微笑んだ。
翠「優一、ありがとね。」
優「…。」
優一は、ふにゃっとした笑顔を見せた。