第14章 刈真の過去
沙・翠「刈真君っっ!!!」
雫「刈真っ!!!!」
私達が叫んだと同時に、
雫はさっと倒れている刈真を抱き抱える。
そして、ゆさゆさと体を揺らした。
雫「刈真っ?刈真っ」
そう呼びかける雫の声は、
不安になったのか微かに震えていた。
刈真は息遣いが荒いまま、目を開けようとしない。
とりあえず私達は、
刈真を頑張って私の家まで運んだ。
学校からは、私の家が一番近いからだ。
部屋につくと、ベットにそっと寝かせ、
洗面所からおけとタオル、
そしておけに水を張り、その中にタオルを浸して
刈真の額にのせてあげた。
刈真は少し落ち着いたようだ。
よく耳をすますと、寝息が聞こえてくる。
私達はひとまず深呼吸をして
部屋の椅子に腰をかけた。
翠「はぁ…とりあえずああしたけど…」
翠が口を開いたあと、また重く口を閉ざす。
私達の間には、重苦しい空気が流れていた。
皆当たり前だろう。
いつもはあんなに冷静沈着で、
皆をリードしてくれている刈真が、
まるで全く違う人のように焦っていた。
あんな刈真を見たのは初めてだ。
私は窓際のベットで寝ている刈真を
横目に、深い溜息をついた。