第9章 文化祭
そこは、 私と彼が最初に出会った場所。
沙「嶋瀬君…」
彼は塀のさくに腕をのせ、
校庭のキャンプファイヤーの様子を眺めていた。
沙「こんなところにいたんだね。」
私の言葉に彼はそっと振り向く。
刈「黒翔さん。どうしてここに?」
沙「どうしてだろう。」
私は息をもらすと、刈真の隣に腕を乗せた。
刈「皆、楽しそうだね。」
沙「嶋瀬君は皆と踊らないの?」
刈「踊るのは恥ずかしいけど下手なんだ。」
彼は頭を掻き、はははっと無邪気に笑った。
私はその笑顔をみて、胸が苦しくなる。
沙「ここで…初めて出会ったんだね。」
刈「そうだね…。」
沈黙の二人を、
涼しい風と火の香りが包み込む。
空は暮れ時。薄紫な色をして、
意地悪そうに雲はゆっくりと動いていた。
校庭では、キャンプファイヤーを
生徒達が踊りながら楽しんでいる。
また、風が吹いた。
この思いが、受け入れられるか分からない。
失敗しても、今までのように
一緒に笑ったり、話をしたりできるのだろうか。
いや、そんなの私が許せない。
金髪のカツラを静かに取ると、
真っ黒な髪が風にふわっと揺れた。
沙「嶋瀬君。」