第19章 【合宿 第二幕】
「美沙さんが絡んだ時の縁下はネタに事欠かないのは確かだけど、他にあいつら話す事ないのか。」
「大地だって前に結婚祝いと出産祝い送るなんて言って縁下おちょくってたじゃん。」
「俺も同罪かよっ。」
菅原に言われた澤村が慌て、東峰が何を思ったのか一人勝手に顔を青くしている。
「もし縁下んちから美沙ちゃんとなんて知らせ来たらどうしよう、俺心臓止まるかも。」
「この馬鹿っ、ひげっ、ノミの心臓の癖に想像するなっ。」
「お祝いは何がいいかな。」
「あの、清水、そこでそーくるの。」
天然なのかわざとなのかわからない清水の言葉に菅原が汗を垂らして呟いた。
さて、一方音駒もまたひどい有様であった。
「くそーっ、何でうちには女子マネいねーんすか、クロさああああんっ。」
「うるせえっ山本、おめーみてえな馬鹿がいるからだ多分っ。」
烏野の方を見て騒ぐ山本に黒尾が蹴りを入れる。
「それにどうせ上に美人とか可愛いがつくんでしょう。」
芝山がボソッと呟き、福永がだよなと言いたげにうんうんと頷く。しかし山本はなぜか此処(ここ)で声を小さくし顔を若干赤らめた。
「いや、最近は地味だけど優しい系がいいな、なんて。」
たちまちのうちに聞こえていた連中は青ざめ、ブチっと来た夜久が山本を指差しながら怒鳴る。
「黙れこのクソ馬鹿っいっぺん埋めてやろーかっ、んでおいっ今の烏野に聞かれてねーだろなっ。」
「縁下君がこっち睨んでないから大丈夫。」
孤爪が烏野の方をチラリと見て状況報告をするが、こいつは珍しく面白がって乗っかっている節がある。
「おし、リエーフっ、お前山本押さえとけっ。」
「イエッサー。」
「てめっこのっ離せええええっ。」
「夜久さん、俺はっ。」
「犬岡はそのまま待機っ。」
「おっす。」
もう訳がわからない。
「あの、みんな、楽しそうだけどちゃんと休もうな。」
海が困ったように微笑みながら言う。
「くっそ。」
避難するかのように海の横に来た黒尾が珍しく苦虫を噛み潰したみたいな顔で言った。