第19章 【合宿 第二幕】
その頃力はガリガリしごかれていた訳だが、合間の休憩中に面倒な事になっていた。
「潔子さん、今日もお美しい。」
「女神だ。」
「また始まった。」
ドリンクを渡してもらいながら阿呆な事を言っている田中と西谷に力はボソッと言った。いつものこととはいえ流石に他校の目がある時くらい控えてほしいものである。
「んだと、縁下コラァッ。おめ潔子さんの美しさがわかんねーのかっ。」
「そーだぞっ、力っ。」
「いやそういう話じゃなくて。」
面倒臭いなもう、と力は思いながらドリンクを口に運ぶ。田中と西谷は力にガルルルルと威嚇しかねない勢いだったが、
「田中さん、西谷さん、無駄ですよそれ。」
月島が更に余計な事を言った。
「縁下さんは今他の女子に興味ないのお忘れですか。」
「つ、月島っ、何をっ。」
力は慌て、月島はあからさまな知らんぷり、愛すべき阿呆共はうーんと考え出す。
「いやお前らも考えなくていいから。」
「他の女子に興味ねえって縁下が今興味ある女子っつったらよぉ。」
「わかったぞ龍、美沙だ美沙。」
「おおそーかっ。ノヤっさん冴えてんなっ。」
「そうだろっ、力。」
「何でそこで俺に聞くんだ、西谷っ。」
「でも事実じゃないですか。」
「ツッキー、煽っちゃダメだよっ。」
「そういや力っ、美沙嫁にすんだよなっ。」
「いきなり何の話だっ、誰だそんな事言ったのっ。」
内心もし可能であればその気なところはあって故に一線越えた身ではあるが確定ではないことを勝手に他で言われてはたまらない。
「え、しねーのか、あんだけ世話焼いてんのにっ。お前それでも男か、もたもたしてっと青城のあいつに持ってかれっぞっ。」
「冗談じゃない、あの人には持ってかれてたまるか。」
「縁下、目やべぇ目っ。」
「木下、今は言うだけ無駄だよ。」
「影山、妹と結婚しちゃダメだよな、ふつー。」
「お、おう。でも縁下さんとままコの場合どーなんだ。」
「ふ、2人とも、そこは今深く考えない方がいいんじゃないかなぁ。」
谷地が冷や汗を流しながら日向と影山に言っている間、3年生達もヒソヒソと言い合っていた。
「最近1年と2年は縁下んちの話がブームなのかなぁ。しょっちゅう話してるよな。」
東峰が言い、澤村がうーんと唸る。