第3章 【唐突な発案】
烏野高校男子排球部のメンツは唐突な奴が目立つかもしれない。
「春だな、ノヤっさん。」
「そうだな、龍。」
「春といや桜だよな。」
「そうだっ、花見行こうぜっ。」
唐突な西谷の発案にずっこけてまず突っ込んだのは2年の頭をはる縁下力だった。
「どこぞのPRか、お前は。」
「縁下さん、あの、突っ込み方が美沙さんみたいになってます。」
1年の山口に指摘されて力はうっと唸った。確かに義妹の美沙は関西弁で何かとネタを絡めた突っ込み方をしている。共に暮らしている間に影響を受けたのだろうか。しかし今問題はそっちではない。
「とりあえず西谷、唐突すぎだろ。」
「いーじゃねーか、花見っ。行こうぜっ。」
「花より団子というかアイスな癖に、やれやれ。」
ため息をついて首を左右に振る力だが、でも、と誰かが言う。
「いいかもしれないな、それ。」
主将の澤村である。
「たまには花を眺めて、か。いいなぁ。」
しみじみという3年エースの東峰にセッターの菅原が面白そうじゃんと乗ってくる。
「みんなで弁当持ってさ、行ったら楽しそう。」
「俺も行きたいっ。」
「まだ話決まってねーだろ、日向、ボケ。」
「君らは常に単純そうで羨ましいよ。」
1年の日向、影山、月島も口々に言い、更に1年女子マネージャーの谷地もノリノリで声を上げる。
「私、お弁当作ってきますよっ。」
「私も。」
口数の少ない3年マネージャーの清水も言うと
「潔子さんの手料理っ。」
田中の顔がパアアアと明るくなる。
「一仁と久志も来るよなっ、寧ろ来いっ。」
西谷に言われて2年の木下が呟く。
「俺らも完全に数入ってるのか。」
「忘れられてないのはありがたいな、それより。」
成田も言いながらちらと力の方を見た。力はしょうがないなと苦笑しながら田中と西谷を見ている。
「力も勿論参加だろ、後はー」
ここで西谷がこれまた唐突に言った。
「おい力っ、美沙も連れてこいよっ。」
「何でだよっ。」
流石に予測していなかった力は声を上げた。
「何でそこでうちの美沙なんだっ。」
木下、成田、菅原がコソコソとうちのって言った、うちのって言ったぞと言い合うが力はそれどころではない。
「あいつ関係ないだろ。」
ところが西谷は逆に何でだよ、と問う。