第15章 【清水の差し金、義兄の悪乗り】
"兄さんこれ何!"
力のスマホにメッセージアプリからの通信が入ったのは彼が自室に上がって自分も着替えようとしていた時のことである。
"何って"
"めっちゃフリフリのお洋服なんやけど!"
"知らないよ、清水先輩がお前に着てほしいって言ったんだから"
"何でやー、こんなん私より谷地さんに着てもろた方がぜったい可愛いやん"
"ゴチャゴチャうるさいよ 清水先輩は前からお前にもっと可愛いの着せろって俺に言ってたからこれで義理は果たせる 後写真撮らせてね、約束しちゃったから"
言葉を失ったのか義妹は怒りや混乱を表す絵文字を大量に並べた挙句1行で送ってきた。こんな時でもスタンプで一つ一つ送ると着信が大変になるのを考慮する所が流石である。力はしばし待ったがその後隣の部屋からの通信は来なかった。
そうして力の部屋にノックの音が響いた。ベッドに寝転がっていた力は上半身を起こしてどうぞと声をかける。ガチャリとドアが開くが義妹の姿がない。
「どうしたんだ。」
いつもならとっとと入ってくる義妹がなかなか来ないので力は不思議に思う。
「母さん達もいないし、早く入っておいで。」
美沙はうう、と唸った。
「清水先輩にもろた服着たんやけど」
「うん。」
「笑(わろ)たらあかんよ。」
「大丈夫だと思う、多分。」
「そら保証はでけへんわね。」
美沙は渋々といった様子で呟き、そおっと部屋に入り、後ろ手でドアを閉める。
入ってきた義妹の姿を見て力は笑わなかった。代わりに息を飲んだ。
義妹はピンクを基調としたロリータ服に身を包んでいた。とりあえずスカートが短い。足が見えるのが恥ずかしいといつも制服のスカート丈を他の子よりも長めにしている美沙なので珍しくて目についてしまう。そのスカートの裾からはドロワーズがチラと見えていて、おまけに足に履いているのはニーハイソックスだ。髪はツインテールに結び、更にはヘッドドレス完備である。何にせよ普段めかしこむことのない美沙がよくぞ1人で着れたものである。
はっきり言おう。それを見た瞬間力はノックアウトされた。普段地味に徹している義妹がフリフリのピンクロリータ服を着て、顔を赤くし、恥ずかしそうに自分を見ている。すごく似合っていて間違っても青城の及川や音駒の灰羽あたりには見せたくない姿だ。