第15章 【清水の差し金、義兄の悪乗り】
烏野高校男子排球部女子マネージャー、清水潔子がそれを後輩である縁下力に渡したのは部活が終わって野郎共も着替え終わってそろそろ帰ろうという時だった。
「縁下。」
「何でしょう。」
「これ。」
言って清水は力にえらくモコモコになっている紙袋を幾つか渡す。たちまちのうちに清水を崇拝している田中と西谷が反応した。
「力てめーっ。」
「潔子さんに何もらってんだああああ、ちくしょーめええええっ。」
「やめろお前ら毎度毎度何でそーなるんだよっ。」
慌てふためく力を見てこれはいけないと思った2年仲間の木下と成田が田中と西谷を羽交い締めにして引きずろうとするが愛すべき阿呆共が暴れるのでうまくいかない。
「田中、西谷、うるさい。」
清水が彼女にしては声を張り上げて言った。途端に愛すべき阿呆共は静かになる。しかも顔が何やら喜んでいる。正直不気味だ。
「これ、美沙ちゃんにあげる。」
清水は力に言った。途端に田中と西谷が大変ホッとした顔をする。
「うちの美沙に、ですか。」
清水は頷く。
「美沙ちゃんはもっと可愛い服着てもいいと思う。それ着せてあげて。」
「ありがとうございます、でもこれ。」
力はもらっておきながらどうなんだと思いつつも戸惑いを隠せない。と言うのも袋に入った包みからうっすら見える生地がどう見ても普通の服に思えなかったのだ。
「何。」
清水はぱっと見わかりにくいがキョトンとしている。
「その、えと、随分フリフリと言うか何と言いますか。これどうなさったんです。こんなこと言うとやらしいですけど、こういうのってまともに買うと値段が張るって聞いたことが。」
「クラスの友達が1年の時の文化祭で使ったんだけど、その後しまいっぱなしで始末に困って引き取り手探してた。だからもらってきた。サイズ的に美沙ちゃんに合うと思う。クリーニング済だからそこも心配しないで。」
力は、ハ、ハァと間抜けな声を出すしかない。
「着せたげて。良かったら写真頂戴。」
念を押された。おまけに写真よこせとまで言われた。清水にしては珍しい。
「わ、わかりました。」
戸惑いまくりながら力は言った。
「ありがとうございます。」
清水はわかりにくいがしかし大変満足そうに去っていった。