第14章 【兄は総毛立つ】
"君とちゃう"
"何でばれたっ"
"否定なしかいっ"
危うく吹き出しそうになった。一体向こうはどんな顔をしてこのやり取りをしているのか。
"またリベロの人に蹴られるで"
"バレなきゃいい"
"バレそーな気ぃするけど"
"ダッシュで逃げる!"
"逃げ切れたらええな"
"美沙はどーなんだよ"
"親の前に兄さんが怖い"
"どんだけだよwww"
"うちの兄さんをなめたらあかんで、あの笑顔の威圧は半端やない"
"よくわかんねー"
"そっちの副部長さんがもしお怒りになったらと想像してみ"
"…………… 超こええ"
"やろ?"
ひととおりやりとりしたところで向こうからの送信が途絶える。
「美沙さん、また。」
谷地が尋ね、美沙は頷いた。
「何でこーなったんやろ。」
不思議やわぁ、と呟いて美沙はまた机に突っ伏した。
と言う訳でその日美沙の義兄である力は家に帰ってまた両親の目を盗み、自室のベッドの上で義妹を抱っこしていたらその義妹から唐突な質問を受ける事になる。
「兄さん。」
「どうした。」
「私は果たして何か魅力のある子なんやろか。」
力は美沙を抱っこしたままずっこけた。おかげで兄妹はベッドに仰向けに寝転がる形となる。
「急にどうしたんだ。」
聞き返す力に美沙は言った。
「兄さんは私のええとこを認めてくれておかげで私は大事にされてる訳やけど、私今まで他所様には構われたことなくて、せやのに今及川さんからメッセくるわこないだからリエーフ君や犬岡君からも何か来よるわ山本さんには天使やとか不思議発言されるわで。ちょっとパニック。」
挙げられた名前に力は一瞬嫌な顔をしてしまったがしかしすぐ戻ってなるほどと、呟く。
「色物に好かれてるのは確かだな。」
「兄さん、それは。」
「俺もその色物の1人だけど。」
「そんなん言うてへん。」
そんなことはわかっている。力は冗談は置いといて、と呟きしばし考える。
「そうだな。」
考えがまとまってから力は言った。
「お前は逃げないからじゃないか。」
美沙がえ、と呟き、力は話を続ける。
「少なくとも俺はそこが好きな訳だけど。」
美沙はうーんと唸る。