第14章 【兄は総毛立つ】
と言う訳で音駒との練習試合を終えた休み明け、ここは烏野高校1年5組の教室である。
「美沙さん、こないだはお疲れ様。」
「いやいや谷地さんこそ。」
「みんな美沙さん撮ったの凄く助かったって言ってたよ。」
「兄さんからも聞いた、ありがとう。お役に立てて嬉しいわ。それはええねんけど、」
「どうしたの。」
ため息をつく美沙に谷地が尋ねた。
「その後若干面倒くさいことに。」
「つまり」
美沙は肩のガジェットケースからスマホを取り出し、メッセージアプリを起動、画面を谷地に見せる。
「ええとこれは。」
谷地が苦笑した。
「音駒のリエーフ君と犬岡君に押されてID教えたらこの様(ざま)。」
「テンション高いのがすごくわかるメッセだね。」
「この人らの返しているうちに某及川さんからメッセ来たらどうなるか。」
美沙の言葉を聞いた谷地の顔が引きつった。
「うわ、大変そう。」
「何でこないなったんや。」
「美沙さん、モテモテだね。」
「何か間違う(まちごう)てる気がする。私こないだまでひっどい嫌われもんやったのに。今かてちょっと敬遠されとるし。」
まあ現在も敬遠されている点は自分の性質を考えれば仕方ないと美沙自身思ってはいるが。
「きっと美沙さんの優しいとこがわかる人達なんだよ。」
美沙はこっちの方がよっぽど天使やんと思う。
「谷地さんの方がよっぽど優しいしおまけに私よりずうっと可愛いと思うけど。」
美沙は例によって本当に思っていることを言ったが谷地が顔を真っ赤にしてパニックを起こした為、なだめにかからねばならなかった。
そうして授業を経てまた休み時間になるとスマホが振動した。メッセージアプリの着信だ、妙な予感がすると思ったら、
「またリエーフ君か。」
独りごちて美沙は机に突っ伏してぐったりした。受信したのは壁の後ろから様子を伺っているスタンプである。つい最近会ったばかりでえらい人懐っこい人やなと美沙は驚きを隠せない。どないしょうと思った挙句、眠そうにしているキノコキャラのスタンプを送ってみた。
"寝るなよー"
メッセージが来た。