第13章 【音駒との邂逅 終幕】
黒尾はクックックッと笑い、じゃあな、と歩き出していった。
「兄さん。」
黒尾の姿が見えなくなった頃合いで、少し不安になってきた美沙は思わず義兄を振り返った。
「大丈夫だよ、美沙。理由はどうあれあの人も勝手にバラしたりはきっとしない。」
美沙の片手をそっと握って力は言った。
「まだ黒尾さんでよかったかもしれないな。」
「うん。」
「さぁ、俺らも帰ろう。」
「うん。」
そうして縁下兄妹も歩き始めた。
仲間の方は兄妹が自分達と一緒にいない事を若干不審に思っていたが、多くはあの兄妹だし2人でゆっくり歩いているんだろうくらいにしか思っていなかった。ただし月島は眉をひそめ、成田と木下は何となく嫌な予感がしないかとコソコソ言い合っていた。
黒尾の方は音駒勢のところへしれっと戻った。どうしたのか聞かれたが忘れ物した、と思って戻ったら勘違いだったと適当にごまかす。しかし幼馴染の元に戻ると彼はこそっと言った。
「烏野のあの兄妹、案の定だったぜ、研磨。」
「やっぱりそっち行ってたんだ。やめなよ、クロ。確かに変な兄妹で正直行き過ぎだと思うけど俺達に関係ないじゃん。」
「面白そうだったからついな。いやぁいいもん見れたわー。」
「たち悪。美沙さん大丈夫かな。」
「おいおい、泣かしてねーぞ。つか山本怖がんないだけあって何気に言い返してきやがった。」
「そっちじゃない。」
残念ながら孤爪の予感は当たっていた。
「兄さん、あの」
家に帰った美沙は戸惑って自分を抱っこしている義兄に尋ねた。
「ジャージのズボン履いてこい言うていっぺん着替えさせたんは誰やったけ。」
ただいま美沙は体操着の半袖シャツ、ハーフパンツの姿である。
「俺だけど。」
「せやのにお家帰って人がこの格好になったタイミングでたまたまきた思たらとりあえずジャージ着直しさせへんのは何で。」
「俺しか見てないから。」
にっこり笑う力、美沙は嫌な予感がしたが逃げられない。あっという間に仰向けにされたかと思うとくすぐり攻撃を受ける。