第13章 【音駒との邂逅 終幕】
色々お互い語りたい事はたくさんあれど時間は過ぎていく。体育館は閉められ、烏野勢も音駒勢も外に出る。もちろんその中には縁下兄妹もいた。
「美沙、お疲れ様。」
皆が僅かな時間も惜しむようにわいわい話している間に力が言った。後ろで田中と山本が号泣し、日向と灰羽と犬岡がやたらテンション高いのが一際やかましい。
「兄さんも。」
「今日はありがとう。」
「あ、う。」
義兄によしよしと頭を撫でられ美沙は照れる。その義兄は少しばかり辺りを見回していた。
「ちょっとだけこっちおいで。」
他の連中は気づいていないようだ。美沙は義兄に言われるがままについて行って体育館の裏に来た。
「兄さん」
どないしたん、と聞く間もなく美沙は力に抱き締められ唇を重ねられていた。
「兄さん、ここ、がっこ」
美沙は慌てて囁く。
「わかってる、ごめんよ。ちょっと家まで我慢出来なくて。案の定向こうの何人かに気に入られちゃってたからさ。」
「そんな、いくら何でも心配し過ぎやって。」
「お前はホント妙なトコで自覚ないな。確かに大衆受けはしないけど、気にいる人は気に入るんだよ。」
「うう。」
「お前あまり人を疑わないから余計心配だ。」
言って力はまた唇を重ね、美沙も自ら返したその時だった。
「へー、なるほどねぇ。」
声をかけられた。瞬間美沙は冷水を浴びせられたような心持ちになった。義兄の力もおそらく同じ心境だろう、美沙を抱きしめる腕の筋肉が一瞬固くなる。
「く、黒尾さん、お疲れ様です。」
力は美沙を離してぎこちなく言う。美沙もぺこりと頭を下げるが動揺して体が震えているのが自分でもよくわかる。
「お疲れさん。」
黒尾はそんな兄妹を見てニッと笑った。
「だけど、ど、どうして。」
力が動揺を隠しきれていない声で言う。
「途中でお前らの姿見えなかったから気になってよ。あ、ちなみに他の奴らは移動してるぜ。」
「孤爪君を置いてきてまで俺ら兄妹を追ってどうするんです。」
「義理の兄妹だって聞いちまってよ、しかも兄貴が見た目にそぐわねえ超弩級のシスコン、そいつらが2人して消えたら気になるだろ。」
「Curiosity killed the cat.(好奇心は猫をも殺す)」