第11章 【音駒との邂逅 第四幕】
しばらくしてまた休憩に入る。美沙は1人二階で休もうとしていたがまた呼ばれてしまった。
「おーい、美沙ー。」
灰羽である。何故彼に呼ばれたのか美沙にはわからない。おまけにもう名前呼びである。本当に用があるのかおちょくられているのかわからなかった美沙は試しに一度聞こえなかったふりをしてみた。
「あ、こら、無視すんなっ。」
「美沙ー、リエーフがこっちきてってさー。」
どうやら本当に自分に用事があるらしい。日向にまで呼ばれたので美沙ははいはい、ちょお待ってと言いながら梯子から降りた。
「何か御用。」
何でもない風に言ってみるがやはり人見知りが2メートル近いでかい奴に近づくのはドキドキするものがある。当の灰羽はワクワクしたような顔をしていたのだが美沙はいつも通り目を合わせていなかったので気づいていない。
「美沙っ、連絡先教えろっ。」
美沙は危うくひっくり返りそうになった。思わず叫ぶ。
「何でやねんっ。」
「友達の連絡先くらい聞くだろ。」
「話早いやっちゃなっ、大して喋ってへんやんっ。」
「俺が友達って思ってるからいーだろ。」
「ちょ、君な。」
美沙は困ってあっちこっちキョロキョロし、義兄の力の姿を見つけるが義兄は他と話すのに忙しくしていて美沙の方を見る暇がなさそうだ。
「わ、私あんま自分から連絡せんから聞いても無駄やで。」
灰羽はそれでと疑問形で言う。
「俺がするからいーじゃん。」
「日向、助けて。」
美沙はダメでもともとで助けを求めてみるがやはりと言うべきか日向もキョトンとしていた。
「美沙、リエーフ嫌いなのか。」
「いやそうやのうて。」
美沙は丁度側にいた犬岡にも目をやるが犬岡も首を傾げて似た反応、全く当てにならない。
「あ、そこのリベロの人、」
窮した美沙はとうとう近くを通った音駒の1年リベロ、芝山に声をかけてみた。人見知りの癖にこういう時は無駄に勇気がある。
「お宅んとこのミドルブロッカーさんが訳わからんくて、この人どないしたらよろしいですか。」
「えと、」
芝山はまさか美沙に声をかけられるとは思わなかったのか大変に戸惑っている。