第10章 【音駒との邂逅 第三幕】
「リエーフに掴まれてふぎゃああって叫んでたのが可愛いって言ってたよね。」
「研磨っ、てめーっ。」
「へえ。」
力の目が細くなる。
「物好きなんだな。」
「いやいやいやいや俺は別にっ」
「まぁ友達なら別にいいけど、」
力は呟き、しかし光のない目で山本を見つめる。
「それ以上は手ェ出すなよ。」
「は、はいいいいいいいっ。」
山本はビシィっと笑えるくらいの気をつけをする。
「えと、お友達として仲良くするにはその、ど、どーしたらいいですか。」
「意地悪せずに普通に話しかけたらそのうち慣れるよ、あいつは。人見知りだからなかなか目を合わせないし言い方が固いけどそこは勘弁してやって。あと関西弁も良かったら許してやって。」
「善処しまっす。」
山本は何故か敬礼をした。もう訳がわからない。
「ついでだからちょっと呼ぼうか。」
「へ。」
「美沙ー。」
「はーい。」
「ちょっと降りてきて。」
力が呼ぶと美沙は降りてきた。が、降りてきた時の義妹の格好を見て力はムッとし、山本は困ったようにキョトキョトしていた。
休憩時間に入ったので美沙はビデオカメラの録画を切ってその場に座り休もうとしていた。しかし
「美沙ー、ちょっと降りてきて。」
義兄の力に呼ばれた。何だろうと思い目をやると側には自分を地味系で可愛くないという言わなくていい本当の事を言ってくれた山本がいる。
「はーい。」
だが美沙が梯子から降り義兄の前に立った瞬間、その義兄の片手で頭を押さえられた。
「お前、ジャージのズボンどうした。」
「暑いから脱いだ。」
「履いてきな。」
「え。」
清水先輩や谷地さんじゃあるまいし自分のハーフパンツ姿など誰も興味なかろうし、どのみち体育の授業で他人に晒しているんだから変わりはしないと思う美沙、何で、と視線で語ってみたが力に無言の命を下されて渋々一度ジャージのズボンを履きに戻る。
「履いてきますた、兄さん。」
戸惑いながら言う美沙の言葉は一部おかしくなっていた。
「本当にお前は。こだわらないにも程があるだろ、勘弁してくれ。」
「いやせやけど兄さん」
「叱られたいのか。」
「何もないです。」
例によってこれ以上の抵抗は危険だ、美沙はおとなしくする。