第9章 【音駒と邂逅 第二幕】
「お前何で翔陽と時と俺らの時と言葉違うの。」
「ホントはばあちゃんの影響で関西弁だけど嫌がる人がいるからドジるか仲良くなってオッケーもらわない限りは使わないんだ、とりあえず離してくれ。」
「何だそれずりぃっ、俺らにも使えっ。犬岡、いいよなっ。」
「全然オッケーっ。」
「いやえと、その、そういうてくれるんは嬉しいけど何なんこの状況。ちゅうか灰羽君ほんまあかんて早よ離してっ、私知らんでどないなってもっ。」
美沙は焦って言うがもう遅かった。
「ごめんよ、灰羽君。」
木下と成田の妨害を振り切った義兄が到着してしまった。その義兄は自分よりもずっとでかい灰羽をにっこり笑って見上げる。
「妹を離してやってくれないか。こいつ人見知りでビビりなんだ。」
灰羽はえ、という顔をし、
「めっちゃ喋ってたっすけど。」
「目、合わせてないだろ。それに君みたいな力強い人に掴まれたら壊れるかもしれないから。」
「友達になりたいだけっすよ、何すか、あんたシスコンすか。」
「灰羽君、あかんてやめたって、兄さん怒るとめっちゃ怖いねんって。」
義兄に向かって挑発的な態度をとる灰羽に美沙は大慌てで忠告し、側にいた日向もリエーフっ縁下さんマジ怒ってるからやめろっと騒ぐが灰羽は止まらない。
「困ったなぁ。」
力は苦笑いし、ちらりと後ろを振り返る。灰羽は不思議そうに自分もそちらを見てしかし瞬間青ざめた。ズドドドドドという音がして先輩である夜久が突進してきていたのだ。やべっと灰羽が言い終わるか終わらないかのうちに
「こんの大馬鹿やろおおおおおおおおっ。」
灰羽は夜久に飛び蹴りを食らった。犬岡と日向までもがひいいいいいっと叫んで顔を青くするがそれどころではない。
「夜久さんっ、いてえっすっ。」
「うるせえっ、お前初対面の女の子に何やってんだ、相手さん叫んでたろーがっ。」
「あまりに悲しい話聞いたらからつい。」
「だから馬鹿だってんだっ、ここのにーちゃんにもどう言い訳するつもりだっ。」
「友達になりたいだけっすーっ。」
「なら普通にやれっ、ふつーにっ。悪かったな、2人とも。」
夜久は灰羽の首根っこを引っつかんで縁下兄妹に言う。
「いえ、助かりました。」
ちゃっかり灰羽から解放された美沙の肩を掴んで引き寄せながら力が礼を言う。