第9章 【音駒と邂逅 第二幕】
「ま、まじか。」
「おう。」
「力は普段大人しいんだけどよ、最近美沙のことになるとキャラ変わるんだ。」
西谷が口を挟む。
「俺が美沙の手触ったら力に触るなって怒られるんだぜっ。本人へーきな顔してるのによ。」
「美沙っていうのか。」
「とにかくいーか虎、これだけはよーく覚えとけ。あの妹と事を構えたら恐ろしいことになるぞ。」
「ままままマジか、龍がそこまで言うたぁ相当だな。気をつける。」
「おう、そーしろそーしろ。死にたくなかったらな。」
山本は首をガクガク縦に振った。
田中と西谷が去ってからの事である。
「なぁ、今の何かおかしくね。」
音駒の3年リベロの夜久がこそっと言った。
「何がっすか、夜久さん。」
「妹に"なった"って何だろ。」
「ああ、確かに。」
副主将の海が言う。
その場にいなかった主将の黒尾、日向と喋りに行っている灰羽と犬岡除く音駒の連中の多くは首を傾げる。が、
「義理の妹。」
プリン頭の約1名、孤爪がボソリと言って音駒の連中はバッと振り返った。
「研磨、今なんつった。」
夜久が引きつった顔で言った。
「翔陽から聞いた。あの子、親がいなくて縁下君ちに引き取られたって。」
「それで事はわかった。」
夜久が呟き、海がなるほどと後に続く。
「妹に"なった"訳だな。でもいいのか本人に断りなく喋ったりして。」
「翔陽が俺に勝手に喋ってるくらいだしみんなに知れるのも時間の問題だと思う。」
孤爪はしれっと言った。
「なぁ、それよりよ。」
山本が言った。
「俺なんか寒気すんだけど。」
「気のせいじゃないの。」
言いながらも孤爪は多分あれだと思った。
向こうの方で縁下力が無表情で山本を見つめていた。
そんな縁下兄妹の話をしていたのは部員達だけではない。主将組でも話に上がっていた。
「おい、澤村。」
黒尾が言った。動かす視線の先には体育館の2階に戻ってビデオカメラの確認に勤しむ縁下美沙がいる。
「今日撮影要員で来たっつーあの女子何だ。」
「ああ、あそこにいる縁下の妹さんだよ。」
澤村は本当の事を答えたが黒尾はほぉ、と呟きしかし誰もが思う疑問を呈する。