第66章 【二度目の終わりと続く物語】
「岩ちゃんてば心配しすぎ。美沙ちゃんこー見えて割と自分で選んで決めてるよ。あ、でもさ」
及川はここで落ち着いてしかしニヤリとした。
「一緒に住んでんのは美沙ちゃんの意志なのかな。」
美沙はギクリとして目を逸らしたがこれはまずかった。たちまちのうちに岩泉が引きつった顔で力に迫り力は引きながら乾いた笑いをする。
「ま た か お め え は。」
「あの、どうせ通うとこ被ったし一緒の方が何かと負担が軽いので。」
「それっぽい事言ってんじゃねえっ、どうせ一番の意図はそこじゃねーだろっこの不純野郎っ。」
「岩泉さん、やめたげてっ。」
「うるせえ、おめーも問題だこの半分ボケっ。いくつになっても兄貴の圧力に屈しやがってっ。」
「岩ちゃーん、ここお店。」
静かに微笑む及川に言われて岩泉は昨今の若い衆はと言わんばかりの視線に気づいて大人しくなった。
「ちっ、及川に止められるたぁ俺も焼きが回ったな。」
「すんません、岩泉さん。」
「まあいいけどよ。」
岩泉は呟き、似ていない顔でしかしよく似た雰囲気で申し訳なさそうに笑う義兄妹に目をやる。
「つーか、よく飽きもせずそこまで一緒にいられるな。」
「無理ないよ、岩ちゃん。縁下君ただでさえこーなのにさ、いっぺんガチでやばい事あったじゃん。」
クスクス笑う及川に岩泉はおうそういえばと呟き、縁下力はああアレですねと呟く。
「災難、って言ったら美沙ちゃんに失礼かもしれないけど。」
「私は別に。私にとっても危機的やったし。」
「後で話聞いたときゃどこのテレビ番組かって思ったわ。」
「俺だってびっくりです。事実は小説よりも奇なりとは言いますけどまさか、ね。」
縁下力は苦笑してカップに残っていたドリンクを飲み干す。
「俺、美沙が妹になるまで自分はずっと平凡でつまらないまま過ごしていくって思ってました。」
「罰当たり野郎。」
「本当にね。」
力は否定しない。