第65章 【強制隔離宣言?あるいは花火の思い出】
「どないしたん。」
「何となく。」
尋ねる義妹に力は微笑んだ。浴衣を嫌がられたりはしたが義妹が幸せそうならそれに勝るものはない。家族に恵まれず周囲からも疎まれ爪弾きにされながらここまできたのだ、これくらいの幸せは受けて然るべきだろう。いや、と力は思った。まだ足りない。美沙が今まで受けた寂しさの分をもっと埋めなくてはいけない。力でも想像がつかない15年分の寂しさ、時間足りるのかなとすら思う。
「兄さん。」
美沙が不思議そうに呼ぶ。花火の光に照らし出されたその顔に何故かドキリとした。
他の烏野の連中はその様子を遠巻きに見ていた。
「何か素敵。」
谷地が頬を染めながら言う。
「漫画みたいね。」
清水がぽそりと呟く。
「くっそぉ。」
田中は悔しそうにしかし笑いながら言う。
「リア充爆発しろと言いてえとこだけどよ、今日だけ特別だ。」
「おう、つーか力と美沙だから許すっ。」
西谷がブンブンと首を縦に振り、
「でもあのさ、完全に覗き見的な何かになってんだけど俺ら。」
東峰が遠慮がちに言えば菅原がガタガタうるさいぞーと言う。
「いいじゃんこっちゃ気を利かせたんだから。成田、木下、ナイス対応。」
「あざっす。」
「後で確実に怒られるな。木下、一緒怒られてくれな。」
「おう。」
「というか」
困ったような顔で言うのは澤村だ。
「あいつら他所様も見てるって状況わかってるのか。」
「澤村さん、あれは開き直ってます。主に縁下さんが。」
鋭いところを突く月島に影山が首をかしげる。
「縁下さん、そんなにままコ心配なのか。」
「さっき美沙が迷子になったからじゃね。」
影山と並びどこまでも鈍い日向に山口が乾いた笑いをした。
「うん、まぁそーかもね。」