第65章 【強制隔離宣言?あるいは花火の思い出】
「とりあえず妹をケージに入れたりは無しな。」
「木下、美沙は栗鼠(りす)じゃないから。」
「じゃあキヌゲネズミ。」
「成田、別にハムスターでもないから。」
「天竺鼠(てんじくねずみ)。」
「木下は更に乗っかるなっ、モルモットでもないからっ。」
「種類はどうするよ。」
「サンドイッチの具を選んでんじゃあるまいしやめろ。」
「縁下さん、ハムスター飼うんですか。」
「いや飼わないからね、日向。」
「美沙さんは短毛のモルモットかなぁ、イメージ的に。」
「元は食用だよね、モルモットって。」
「山口と月島も頼むから齧歯目(げっしもく)から離れて。」
「げっしもく。」
「ざっくり言うと鼠の仲間だよ、影山。」
「ままコはその、あの灰色で小せえ感じのハムスターな気がします。」
「お前もか。」
相変わらずの無茶苦茶である。
「何で鼠の話になってんの。」
菅原がクスクス笑い、澤村も困ったように微笑む。
「まあ平和でいい事だよ。」
呑気に東峰が言う。
「縁下の周りは炎上してる気がするけど。」
菅原の言う通りではある。話を途中で聞きつけた田中と西谷が首を突っ込んできたのだ。
「何だ力、ペット飼うのか。」
「飼わないってば。」
「まー縁下にはいらねーわな、自慢の妹様がいるんだしよ。」
「こんな時だけ嬉々とした顔するな、田中。てかみんなしてうちの美沙をペット扱いか。」
「最初に栗鼠がどーとか言ったのお前じゃん。」
言う木下に力はぐぬぬとなる。
「ん、ペット。」
疑問形で呟く日向が悪気なくしかしとどめを刺した。
「縁下さん、美沙は嫁ですよね。」
澤村がこら日向っと声を上げた。東峰がゲーンッとなって顔を青くした。菅原は腹を抱えて笑い、田中と西谷もギャハハと笑いながら日向(翔陽)よく言ったと無責任に褒め、木下と成田は明後日の方に目を逸らして聞かなかったふり、山口はうわあああと慌てふためいて月島は馬鹿と一言、影山は何がどうなってんだとキョトンとしている。この辺の話は女子陣にも聞こえて谷地は何ですとおおおおっとやはり動揺、清水は顔色一つ変えない。
そして当の縁下兄妹は固まるしかなかった。
「兄さん、何がどないなっとんの。」
「俺に聞かないで。」