第63章 【強制送迎宣言あるいは混沌】

「花巻さん。」
「やっぱりか。何これカオス。」

美沙は頭を抱えとうとう渡に慰められた。

「色々な意味で大変だと思うけど気を落とさずに。」
「渡さんも大概苦労してはるんちゃいますのん。」
「あはは、まぁね。」

そうして連中は歩き続ける。はたから見るとでかい野郎共の中にポツンといるヒョロヒョロの約1名は目立つ事この上ない。更に及川が人目を惹く見た目なので周囲の視線が半端ではなかった。自分がやらかしたのが悪いのも手伝って美沙は隠れたい心境である。

「おい、足元。」

岩泉に言われて美沙はハッとした。

「ったく危なっかしさも変わらずか、しょーがねー奴だ。」
「岩ちゃんてばそんな言い方したら美沙ちゃん泣いちゃうよ、もっと優しくさぁ。」
「こいつが兄貴以外の前で早々泣くのかよ。」
「あはは、そーゆー評価なんだ。聞いた、美沙ちゃん。」
「えーと。」

褒められてるのか単なる客観的な話なのか判断がつかず美沙は首を傾げる。

「褒められてんだよ。」
「余計な情報流すんじゃねえ、クソ川。」
「とりあえずありがとうございます。」
「別に。」

岩泉がそっぽを向くので他の奴らが面白がる。

「おい今度は何のフラグだ。」
「花巻、フラグはないんじゃないの。って言いたいとこだけど美沙さんはど天然だからなぁ。」
「フラグ言うなそして誰がど天然やっ。」
「あの、天然じゃないつもりだったんすか。」
「ちょっ、金田一君まで何なんっ。」
「金田一にしてはナイス突っ込み。」
「国見君はホンマ容赦ないんやね。」

好き勝手言われながらも美沙は青葉城西の連中と一緒に義兄達のもとへたどり着いた。

「美沙。」

早速力がカンカンと下駄を鳴らして前に出てきた。

「兄さん、みんな。」

美沙も義兄に駆け寄る。うっかり抱きつきそうになったのは辛うじて堪(こら)えた。青城の連中もいる前でやってしまっては洒落にならない。

「美沙さんっ、良かったぁ。」
「大丈夫、変な事されてない。」
「ごめんな、谷地さん。清水先輩もすみません、変な事は若干。」
「若干とは。」
「あ、田中先輩もご心配おかけしました。若干言うんはその」

美沙はモゴモゴと言う。その間にも義兄の力は青城の連中と話をしていた。